スプリング×ラブ!
「てか、坂井くん口調が違くない?」
「は?なに?」
「…よくわかんないんだけど、気のせいかな」
「気のせいなんじゃないの」

そうかなあ、と春は首をひねった。


実際、彼の口調はクラスの他の女子へのそれと大きく異なっていたのだけれど、本人は気付かない。春も、「違うのかな」と勝手に納得してしまったので、彼が気付くのはもう少し後になる。





だんだん薄暗くなって来た道を、2人は変わらないペースで歩く。太陽が完全に沈めば、花粉はこれ以上飛ばない。つまり、いくらか過ごしやすくなるのだ。

それからしばらく無言で進み、狭い路地を抜けて角を曲がると、最初の桜並木の歩道に出た。

「おおおっ!ここにつながってるんだぁ!!」
「え、この道はわかるんだ」
「もう、さっき人の話本気で聞いて無かったんだねー?昔この辺に住んでたっていったじゃん」
「あ、そうなんだ」

そう返しながら、涙がたまった目を拭う。

「ど、どうしたの?」
「なにが?」
「泣いてるじゃん!」
「泣いてるんじゃなくって、涙が出てるだけだよ」
「それを泣いてるっていうんじゃないの!」
「ぜんぜん違うね」

感情が絡んでるやつとは、ぜんぜん違うから。
そういうと春は薄闇の中で首をひねった。


駅が見えて来ていた。



< 53 / 119 >

この作品をシェア

pagetop