スプリング×ラブ!
──放課後。
薬が効いたのか午後一度もクシャミをせずに過ごしていた透夜は、朝寄って以来1度も準備室に行ってなかったことを思い出して、行ってみようかと階段を下りていた。
踊り場の窓がいちいち開いているのが腹立たしい。だけど薬の効果だろうか、目の痒みはともかく、鼻は凄く楽だった。
後ろから騒がしい足音が聞こえてきたので反射的にちらりと振り返ると、予想通りというかなんというか。春が自分に向かって駆けて来ていた。
「坂井くんっ」
「……なに?」
「準備室行くの?」
「……うん」
「私も行く!」
「………どーぞ」
朝ストラップがどうだこうだと騒いでいたくせに、と透夜は思う。ありがとっとあの笑顔を向けられて、彼は小さく鼻をならした。
準備室につくと、春は窓際の木のイスに座って、昨日のマンガの2巻を読み始めた。
透夜が中学生の時に大好きで毎日のように読んでいた少年マンガ。彼女はときどき笑い声をあげる。
「………ねぇ、山口」
(「……あれ、名前呼んだのはじめてかもしれない」)
透夜はぼんやりと窓の外を見ながら、春に訊いた。
「んー?なに?」
笑いのせいで目にたまった涙を左手で拭いながら、春が振り向いた。
「……なにしに来たの」
「えーマンガ読みに?坂井くんこそ」
「………俺は、寝に」
透夜が静かに言うと、春はハッとして口を両手で覆った。
「あーっ!うるっさいよね!そっかそゆことかっごめんね、出てく出てく」
「え、ちょっと……」
春はバタバタ荷物をまとめて、部屋を出ていこうとした。じゃあね、と肩にカバンを掛けながら言う彼女のそのカバンのヒモを、彼は咄嗟につかんだ。
薬が効いたのか午後一度もクシャミをせずに過ごしていた透夜は、朝寄って以来1度も準備室に行ってなかったことを思い出して、行ってみようかと階段を下りていた。
踊り場の窓がいちいち開いているのが腹立たしい。だけど薬の効果だろうか、目の痒みはともかく、鼻は凄く楽だった。
後ろから騒がしい足音が聞こえてきたので反射的にちらりと振り返ると、予想通りというかなんというか。春が自分に向かって駆けて来ていた。
「坂井くんっ」
「……なに?」
「準備室行くの?」
「……うん」
「私も行く!」
「………どーぞ」
朝ストラップがどうだこうだと騒いでいたくせに、と透夜は思う。ありがとっとあの笑顔を向けられて、彼は小さく鼻をならした。
準備室につくと、春は窓際の木のイスに座って、昨日のマンガの2巻を読み始めた。
透夜が中学生の時に大好きで毎日のように読んでいた少年マンガ。彼女はときどき笑い声をあげる。
「………ねぇ、山口」
(「……あれ、名前呼んだのはじめてかもしれない」)
透夜はぼんやりと窓の外を見ながら、春に訊いた。
「んー?なに?」
笑いのせいで目にたまった涙を左手で拭いながら、春が振り向いた。
「……なにしに来たの」
「えーマンガ読みに?坂井くんこそ」
「………俺は、寝に」
透夜が静かに言うと、春はハッとして口を両手で覆った。
「あーっ!うるっさいよね!そっかそゆことかっごめんね、出てく出てく」
「え、ちょっと……」
春はバタバタ荷物をまとめて、部屋を出ていこうとした。じゃあね、と肩にカバンを掛けながら言う彼女のそのカバンのヒモを、彼は咄嗟につかんだ。