スプリング×ラブ!
コンコン、と控えめなノックの音がした。

「はい?」

反射的に答えると、引き戸がカラカラとまた控えめな音をたてて開いた。

「あ、坂井くん」
「三橋、さん」

春と違って常識人の彼女を初めから呼び捨てにするのは気が引けて、中途半端に「さん」を付けた。夏香は少し笑うと、奥で寝ている春に目を向けた。透夜はつられてそっちを見て、ああ、と言った。

「マンガ読むってここに来たんだけどね、すぐ寝たみたいで」
「そっか」
「三橋さんは?」
「私は、春からメール入ってて」

そう言いながら夏香はケイタイを操作して、受信メールの画面を透夜に向けた。

────────
差出人:山口 春
件名 :帰り、
────────
部活終わったら、
待ってるから一緒
に帰ろっ(*pq∀`)
第二美術準備室に
居るね~
────────

「………へぇ」
「もー寝てるなんてねっマイペースすぎ」

夏香はケイタイをブレザーのポケットにしまうと、春帰ろーと言って親友を揺り起こした。




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