スプリング×ラブ!
「谷原くん、坂井くんー!お待たせーっ」
「え、ちょっと春ちゃんっ」

向こうから手を振りながら走ってくる。春は足が速いようで、その後ろを園田が必死に追っていた。
春はあっごめんね亜依ちゃん!とUターンして、園田の方へ駆け戻った。

「……ずいぶん騒がしい登場だね」

透夜がふっと笑う。今日はマスクをしていなかった。薬が効いているのだろう。
谷原は「素直じゃないな」と口の中で言ったあと、頑張れーと春たちに叫んだ。

「ちょ、恥ずかしいから止めろよっ」

透夜がギョッとして言うと、谷原はケラケラ笑った。




「はー疲れたー」
「遊ぶ前から疲れてどうすんの山口っ」
「あはー、……お待たせしましたっ」

笑う谷原に向かって、おどけた仕草で敬礼をする春。谷原は余計に笑った。

「坂井くんもごめんねっ!私寝坊して、亜依ちゃん待たせたのっ」
「え……春ちゃん」
「(いいのいいのっ!)眠くってさぁ」

本当は遅れたのは園田なのだけど、春はそんなこと言わせなかった。すっかりキューピッド気分の春に、透夜は気にくわなそうな顔でバカじゃないのと言った。

「ダメじゃん。なに?寝坊とか」
「まぁまあ!中入ろーよ!時間もったいねぇしさ」

谷原の号令で、一行は入場ゲートに向かった。



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