スプリング×ラブ！

「へっ？」
「……そんなさ、無理に笑わなくても」

彼はとても小さな声で、でも良く通る声で言った。春は泣きたくなった。
よくわからないうちに涙が出そうになったので、オレンジジュースを飲んで誤魔化した。


「山口～ただいまっ」
「あ、お帰りっ！カレー冷めちゃうよ？」
「じゃ透夜お先っす」
「うん」
「わーなにこれシーフード！すげぇ豪華っ」
「コーラもどうぞっ」



やり取りをしながらも、心はどこか別の場所にあるようだった。

(「あれ、おかしいな」)



透夜の笑った顔が、誰か一人のものになるかもしれない。心配してくれる声が、誰か一人のものになるかもしれない。
そんなの嫌だと、自分勝手な考えが浮かんで自己嫌悪に陥った。