【短】溺愛ショコラ



先生だったら、私よりも女の子らしい振る舞いがあの人の前でできるだろう。

先生だったら、私よりも経済力があるから、あの人を喜ばせることができるだろう。

先生だったら、私よりも才能があるから、あの人との未来を簡単に描けるだろう。

先生だったら――…


色んな感情が小さな心に一気に流れ込んできて、気づいた時には私の瞳からタラリ、と涙が零れていた。


『っ、』

「そんな…先生だったなんて…っ」


そんな、そんな。

昨日彼に告げられた事実より、今目の前に突き付けられた事実の方が、私の心を容赦なく抉っていった。


尊敬してた、先生を。

天邪鬼の人だけれど、憧れだった、先生が。

手のかかる人だけれど、芯のある人だと思ってた。

――なのに。


ズル…ッ

『茉子ちゃん!?』


全身の力がフッ、と抜けて、私は床に座り込む。

目の前が、真っ暗に見えた。



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