オオカミと少女
街角のパン屋
「ナターシャ!!ちょっと手が離せないから、代わりに店出ておくれ!」
「はぁい!」
ナターシャはそう叫び返してパンを並べていた棚から離れてレジに向かった。
「お待たせしました。お1つでよろしかったですか?」
「ええ。ナーちゃん、いつも頑張ってるわねぇ。」
「ありがとうございます。
ミストおばさんもお腹に赤ちゃんいるんだから、気をつけてね。」
ミストはパンパンに膨れたお腹をさすって嬉しそうに頷いた。
「大事な命ですもの。十分気をつけてるわ。
ナーちゃん、レミットとは上手くやってる?」
昼前で店は混んでいなかった。
それをいいことに、ミストはまたパンを並べるために棚に戻ったナターシャの横に椅子を引っ張ってきて座った。
「ええ。
レミットおばさんはとても優しい人よ。
ミストおばさんと双子なのに、全然似てないけど。」
ミストはそれを聞くとクスクス笑って店の奥を覗き込んだ。
「レミット、聞いた〜?
あなたのこと優しい人ですってよ。」
「何だって?聞こえないよミスト!」
「ミストおばさん、今パン焼いてるんだから聞こえないわよ。」
「うふふ。聞こえてるはずよ。
照れくさいだけ。」
ミストは声をあげて笑うとその笑顔のままナターシャを見た。