オオカミと少女
それは店の扉が開いた音で、入ってきたのは1人の青年だった。
「いらっしゃいませ。」
ナターシャは振り向いてそう言った。
「ああ。」
青年はキョロキョロと店の中を見回したが、しばらくしてまたナターシャを見た。
「…1番人気のを。」
「はい。
1番人気はこれなんですけど、今奥で焼いてるのでもう少ししたら焼きたてが出て来ますが、お待ちになりますか?」
「じゃあ、待たせてもらう。」
青年の声を聞いてミストは立ち上がった。
「じゃあ、ナーちゃん。また来るわ。」
「あ、待って。ミストおばさん。」
ナターシャは扉に走り寄るとミストが開ける前に扉を開いた。
カランカラン…という音が店内に響く。
「はい、気をつけてね。」
「ありがとう。
この子が生まれたら優しいお姉さんになりそうね。」
ミストはニコッと笑うと店を出て行った。
ナターシャは扉を閉めると青年に笑いかけた。
「もう少し、お待ち下さいね。
あ。よろしければお座り下さい。」
「ああ。」
ナターシャがミストの座っていた椅子を指すと、青年は頷いて座った。