オオカミと少女
「私の両親も、兄も、みんな冬に亡くなったから。」
「…1度に家族を亡くしたのか?」
イーサンの言葉にナターシャは首を振った。
「両親は私が5歳ぐらいのときかな。
兄は4年前。みんな心臓が悪くて。」
「心臓…」
イーサンは少し俯くと自分の左胸をコンコンと叩いた。
「ナターシャは、大丈夫なのか?」
「私?」
イーサンは頷いた。
「家族みんな悪いんだ。
遺伝ってこともあるだろう。」
「私は大丈夫よ。昔から雨だろうが雪だろうが、構わず走り回ってたもの。」
ナターシャが笑うとイーサンも少し笑った。
「イーサンは?ご両親は元気なの?」
「俺は、両親の顔を知らない。」
「え…。」
悪いことを聞いてしまった、と俯いたナターシャを安心させるようにイーサンは笑った。
「母は未婚のまま俺を産んで、すぐに亡くなったそうだ。
それから俺は施設で育った。10歳になってすぐくらいに嫌になって出たけどな。」
「イーサンって、今何歳?」
「20歳。」
「あら、あたしより2歳も年上!」
ナターシャは驚いたようにイーサンを見る。