オオカミと少女
開かれた本の、『オオカミ人間』と書かれたページに涙が落ちた。
そのすぐ後に本は閉じられ、本を持っていた手は次に1人の赤ん坊を抱き上げた。
「ごめんなさい…ごめんなさい…!」
濃い茶色の髪を持ったその赤ん坊は、鎖骨から首筋にかけて大きな黒いあざがあった。
しかし赤ん坊はそんなこと知りもせず、スヤスヤと眠っている。
「私が悪いの。
あなたが幸せになれないことは分かっているのに、あなたを殺せないの…」
閉じられた本のすぐ横には、長くて細いナイフが置かれていた。
「ごめんなさい。
あなたを、普通の男の子として産んであげれば良かった…。
私が悪いのよ。ごめんなさい…」
ランプの灯り1つだけだった暗い部屋に、窓から明るい月の光が入ってきた。
「あ、あ…月なんて、月なんてなくなってしまえばいいのに……」
そのとき、赤ん坊が突然カッ!と目を見開いた。
その真っ赤な目はじっと月明かりの差し込む窓を見つめている。
窓の外には大きな満月が不気味に輝いていた。
「今日みたいな満月なんて、一生こなければいいのに…!!」