オオカミと少女
「まいどあり!いつもありがとうね。」
いつものようにナターシャが袋に詰めてイーサンに渡し、レミットがレジを打つ。
イーサンが店を出るのをナターシャが見送るのもいつも通りだった。
「イーサン。具合が悪いんだったら、ちゃんと休んでね?」
「ん?…ああ。ありがとう、ナターシャ。」
また優しく笑ったイーサンに、ナターシャは頬を赤く染めて頷いた。
「じゃあ、また来て下さい…」
ナターシャが寂しさを紛らわすようにそう言ったとき、イーサンがナターシャの腕を掴んだ。
ナターシャは驚いてイーサンを見上げる。
「えっと、その…」
珍しく口ごもるイーサンに、ナターシャは首を傾げた。
そのとき、2人の後ろにレミットが現れた。
その顔はニヤリと笑っている。
「ナターシャ。今から1時間休憩をあげるから、ゆっくりしといで。」
「え、でもおばさん。これからが1番大変なんじゃ…」
「あんたがいなくても1時間ぐらいなんとかするさ!
イーサン、1時間だけこの子を預かってくれるかい?アタシとミストの大切な娘だ。傷つけたら承知しないよ?」
「はい。分かりました。」
イーサンはナターシャの腕を掴んだまま頷いた。