オオカミと少女
「知らないわ。」
「あの時何かあったのかい?
ブレスレットを貰ったんだって、嬉しそうに帰ってきた時は何も感じなかったんだけどね?」
「……」
店の中に夕日が差し込んで来た。
「…動物のパンかな?」
「動物のパン?ああ、アタシが久しぶりに焼いたウサギと羊のパンかい?」
ナターシャは頷いた。
「じっと、あのパンを見てた。
どこか苦しそうで寂しそうな目で。
そのすぐ後に高台に行った。
そこには辛い時によく行くんだって、イーサン言ってた。」
「そうかい。動物が苦手だったのかもしれないね。悪いことをしたな。」
カランカラン…
扉が開く音が聞こえ、2人は来客に慌てて立ち上がった。
「いらっしゃいませ…ってあら、ウィリアムじゃない!」
店に入って来たのは汚れた金髪にナターシャと同じ緑の目を持った少年だった。
歳はナターシャと同じぐらいだが、他の男に比べて背が低い。
「よ!ナターシャ久しぶり!レミットおばさんもまた貫禄が出たなぁ!」
「うるさいよ、ウィリアム!にしても久しぶりだね!」
レミットも嬉しそうに笑った。
「そうだなぁ…学校を卒業してからだから、2年ぶりくらいか?」
ウィリアムはレジまで歩いてくると嬉しそうにナターシャの顔を見た。