オオカミと少女
「俺がこの街に戻って来たのは、知らせを届けるためだよ。」
「何の知らせなの?重要なこと?」
「ああ。それはもう!」
ウィリアムはどこか興奮したようにレジに手をついた。
「1週間前だ。
俺達の街で、オオカミ人間が出た。」
「何だって?」
オオカミと聞いてナターシャの表情が曇り、オオカミ人間と聞いてレミットが聞き返した。
「あの、100年に1度生まれるって言う…。」
「ああ、そうだ。
言葉を話したのを聞いた人がいる。姿はオオカミだったけど、あれは間違いなくオオカミ人間だ。
街も随分荒らされて、家畜の羊とかウサギがいくらか殺られたらしい。
パニックを起こすといけないからって政府が情報を街の外に出さなくってさ。
俺も街を出るときに検問を受けた。1週間かかったよ!」
「それをアタシらに話しちまってるじゃないか。」
「2人はむやみに言って回ったりしない人だって知ってるからさ。
用心して欲しくって。」
俺にとって大切な人達だから。とウィリアムは真っ赤になって付け足した。
「そのオオカミの言葉ってのは、何だったんだい?」