オオカミと少女
兄との別れ
大粒の雨がふっていた。
ナターシャは大きな籠を両手で持ち、フードをかぶってその中を走っていた。
いくらうっそうと茂る森の中だからと言って大粒の雫は容赦なくローブを濡らす。
ずり落ちるフードのせいで後ろで1つに束ねた真っ黒な髪の三つ編みと鮮やかな緑色の目が露わになる。
でも両手が埋まっているナターシャにはどうすることも出来ずに頭から左肩に向けてずぶ濡れになった。
「もう!だから雨って嫌いなのよ…!」
文句を言ったところで変わることもない天候に嫌気がさしながらナターシャは急ぎ足で木の間をくぐる。
すると少し前に一軒の小屋が見えてきた。
木でできたその小屋は灯りがついていて、薄暗い中に灯々と輝いていた。
ナターシャはその小屋の隣にあった屋根だけの小さな納屋に駆け込むと籠を置いた。