オオカミと少女
「んん…イーサン…?起きたの?」
ナターシャは眠そうに目をこするとひとつあくびをした。
「…今、何時?」
「朝の7時だよ。ナターシャ。」
ウィリアムの言葉に過剰に反応したのはナターシャではなくイーサンだった。
「朝、7時?」
「え、ええ…」
その赤い細い目がキッとウィリアムを見たことでウィリアムはおずおずと頷いた。
「俺…昨晩どんな様子だった。」
「とても、うなされていたわ。ずっと『ごめん、許してくれ』って呟いてた。
それに、何かを抑え込んでいるようにも見えたわ。」
「そ、そうか…」
「…何か、苦しんでることがあるんですか。」
ウィリアムのその言葉にイーサンはゆっくりと顔を上げた。
「そんなもの、誰にでもあるだろ?お前には関係ないことだ。」
「そうですけど…!」
ウィリアムは何かを言いかけてやめた。
これでもかというほど眉を寄せ、じっと俯いている。
「…ナターシャ。
俺レミットさんの手伝いしてくるから、イーサンの側についててやれよ。」
「…!うん!ごめんねウィリアム。」
ウィリアムはナターシャに笑って見せると部屋を出て行った。