オオカミと少女

そこは元々ミストが使っていた部屋で、今は客室としてイーサンが使っている。




「イーサン…?」




しかし、そこにイーサンの姿はなかった。



ベットには人が寝ていた形跡はあるが、部屋には誰もいない。




「イーサン、どこなの?」




そのとき、ナターシャはイーサンの言葉を思い出した。




『…うん。ゆっくり、していくな。』



そのときのイーサンの顔はとても悲しげだった。



(イーサンは、ゆっくり眠れなかったのかも。)



あんな大怪我を負った後だ。



昨晩の様にうなされて眠れず、散歩に出たのかもしれない。



「イーサンが、危ない!」




ナターシャはそう言って階段を駆け下り、1階の店に降りた。



そこでは施錠されたことを確認しに行っていたウィリアムが居て、驚いた表情でナターシャを見た。




「ナターシャ、どうし…って、ナターシャ!?」




ナターシャはウィリアムの横を通りすぎると、ウィリアムの問いかけを無視して鍵を開け、外に飛び出した。







< 36 / 53 >

この作品をシェア

pagetop