オオカミと少女
そこは元々ミストが使っていた部屋で、今は客室としてイーサンが使っている。
「イーサン…?」
しかし、そこにイーサンの姿はなかった。
ベットには人が寝ていた形跡はあるが、部屋には誰もいない。
「イーサン、どこなの?」
そのとき、ナターシャはイーサンの言葉を思い出した。
『…うん。ゆっくり、していくな。』
そのときのイーサンの顔はとても悲しげだった。
(イーサンは、ゆっくり眠れなかったのかも。)
あんな大怪我を負った後だ。
昨晩の様にうなされて眠れず、散歩に出たのかもしれない。
「イーサンが、危ない!」
ナターシャはそう言って階段を駆け下り、1階の店に降りた。
そこでは施錠されたことを確認しに行っていたウィリアムが居て、驚いた表情でナターシャを見た。
「ナターシャ、どうし…って、ナターシャ!?」
ナターシャはウィリアムの横を通りすぎると、ウィリアムの問いかけを無視して鍵を開け、外に飛び出した。