オオカミと少女
ウィリアムの制止を振り切り、ナターシャは必死に走った。
「高台、高台…!」
(そこにいるかもしれない!)
気づけばウィリアムはナターシャを見失ったようで、その姿は見えなかった。
ナターシャが走る道では地元の警備団や警察が走り回っている。
「おい、君!」
そのうちの1人がナターシャに声をかけた。
「何をしている、家に帰ってじっとしていたまえ!」
「1人外に出たみたいなんです!」
ナターシャは必死に訴えた。
「その人、大怪我しててとてもじゃないけど逃げれる状態じゃないの!早くしないと、もしかしたら殺されるかも…!」
(そんなの、嫌よ。)
イーサンは初めて好きになった人。
こんな簡単に失うわけにはいかなかった。
「分かった、分かった…!
その人の容姿を教えなさい。そして君は家に帰るんだ!」
ナターシャはそれを聞いて安堵した。
イーサンの容姿はこの辺りでは見かけない珍しいものだ。
きっとすぐに見つかるだろう。