オオカミと少女
「その人はイーサンといいます!
背は私より頭1つ分高くて、目は細くて真っ赤。髪は黒を混ぜたような濃い茶色です。
体中傷だらけなんですけど特に足に大怪我を負っていて、引きずってる状態なの。」
ナターシャはイーサンのありのままの姿を伝えたつもりだった。
しかし、男は目を見開いてナターシャを見た。
「君、それは…」
男の驚きの表情にナターシャは不安になって首を傾げた。
この警備団の男は、イーサンを知っているようだ。
(警備団に知られているなんて、イーサンはもう…?)
最悪の事態が頭をよぎる。
ナターシャがそれを振り払うように頭を振ったとき、男はその表情のまま呟いた。
「赤い細い目に、濃い茶色の毛…。君、それはオオカミ人間だよ!」