オオカミと少女

(ナターシャがこの姿を見たら、どう思うだろう。)




いくら見た目が変わっても毛や目の色は変わらない。



ナターシャはイーサンの容姿を珍しいものと言ったし、この姿を見ればオオカミがイーサンだと分かるはずだ。




「ウァァァアア…!」




体の熱が少しずつひいてきた。



曇っているため分からないが、月が上空から傾いてきたのだろう。




「もうすぐ月も沈むぞ!人間に変わるまで待ち、それから捕らえろ!」




警備団の団長らしき髭の男がその場にいた全員に指示を出す。




(俺が、何をしたというのだ。)




確かに、レミットにウサギと羊のパンを見せられたときはそれらを食い殺したい衝動に駆られた。




頭ではそれを振り払っても、隣街でこの姿になったときは本能が覚えていたのか家畜を殺してしまった。




(でも、人間は殺してない。なんとかして自分を抑えたのに…)




もう、人は殺したくない。




イーサンは目を閉じた。






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