オオカミと少女
愛し、愛される人とのキス。
それはイーサンのオオカミ人間の呪いをとき、人間に戻す力があるとされている。
しかし、歴史上それを実現したオオカミ人間はいない。
それはいくらオオカミ人間が愛しても、相手がオオカミ人間の本当の姿を知りながら愛してくれないと意味がないからだ。
歴代のオオカミ人間達は自分の正体を恐怖のあまり打ち明けられず、バレてから幻滅されて捕まるのだ。
イーサンにとってもそれまでの人達のように勇気が出ないのは一緒だった。
ナターシャが「ゆっくりしていってね。」と言った時、イーサンには自分がゆっくりなど出来ないことは分かっていた。
その前の晩うなされるだけで済んだのが奇跡だったんだから。
ナターシャは、自分の本当の姿を見ればどう思うだろうか。
あの奥の窓からこちらを見ていた女の子は、今でもイーサンを恨んでいるだろうか。
殺したいと思っているのだろうか。
「ウゥゥゥゥ……」