オオカミと少女
ナターシャはその言葉に笑顔を浮かべると、玄関まで戻って置きっ放しだった籠を持って奥の部屋に入った。
奥の部屋にはベットが2つと窓があるだけで、無駄なものは一切ない。
ナターシャは籠を置いてふと顔をあげると窓の外を見た。
外はだんだんと暗さを増していて、夜に近づいているのが分かる。
「これじゃあ、せっかくの満月も台無しね。」
「ナターシャ。」
「きゃあ!」
突然肩に置かれた手に驚いてナターシャは振り返った。
そこにはニコニコと笑ったサイオがいる。
「も、もう!びっくりしたじゃないの兄さん!」
「ごめんよ。」
クスクス笑うサイオを見てナターシャは心配そうな顔をしてサイオを見上げた。
「兄さん?
私の声でびっくりしなかった?兄さん心臓が悪いんだから、あんまり驚くと…」
「僕が脅かしたんだよ、ナターシャ。
君は何も心配しなくていい。
6歳も年上の僕をあまく見ちゃいけないよ?」