初恋日和
午後6時。

春の夕空ははまだ景色を包み込むように明るく、満開の桜は綺麗なオレンジに染まっていた。

「彼氏、かあ…」

今まで自分から彼氏という単語を出したことがない私だが、何故かふと口からこぼれた。

「桜、綺麗だなあ」

あたりが桜でいっぱいになるほどの満開の桜は、心が揺さぶられるほどだ。

今になっていうが、私は部活に入っている。

その部活は中学生の時からずっと今も継続しており、部活は私そのものだった。

夏樹も夏樹で、スポーツ万能さを生かしてバスケ部に所属している。

夏樹の技術は全国大会も遠くないというほど素晴らしい才能であり、部員にとっても夏樹は欠かせない存在だった。

「あ、もう帰らないと。アナウンスアナウンスっと…」

そう言うと、私はマイクに口を近づけた。

『下校時間となりました。下校中のみなさん、部活動で学校にまだ残っているみなさん、下校時間となりました。生徒は、直ちに下校の準備を始めましょう。』

これが私の毎日の日課。

帰るのは遅くなるけど、このアナウンスをすることによって自分が生きている意味が見出せるような気がするのだ。
< 6 / 23 >

この作品をシェア

pagetop