ロミオとジュリエット


仮面を外して、夜空にむかって顔をあげた

この街の空はいつも綺麗

今日の夜空は、なにか突き刺さるような輝きがあった。胸が痛む。






お母さんがいなくなった時、夜空にむかってあたしはないていた
だけど、毎日大丈夫って言い聞かせてた。まだ胸は痛かったのに。


そんな時いつも側には、お父さんがいてくれてた。

だから胸が痛くても信じれた。
明日のあたしはもっと強くなれるってことを。




いま、わたしは昔と同じように明日にむかって光る星を眺めている。
わたしの心は、前とおなじような痛みがはしっている




ただ前とは違う
わたしを支えてくれる人はいない









明日のあたしは強くなれてるのかな。
明日にむかう星を眺めていてもなにも答えはでない。






視界がぼやけた時急に肩に暖かいものが触れた。

…毛布?



「大丈夫?」

後ろを振り向くと、綺麗な瞳に長いまつ毛、さっき見たブロンドの髪をゆらす男の子が立っていた。



「…ロミオ?」


「寒いでしょ?」
微笑みながらイスに座るロミオにまだ驚きが隠せない。



「…どうして?
もう2曲目が始まってる」


前を向きながら言った。
この瞳を見ると、泣きそうになってしまうから。


「はは。そんな薄情な男じゃないよ!
…なんだか心配で。」


こっちを見ながら言っているのがわかる。


「それと…」


背もたれに寄りかかって少し小声の声がきこえた。



「…泣いてるように見えたから。」


急にそう言われてロミオの方を向くと、
真剣な眼差しのロミオと目があった。



「なぜか、ほっとけなかったんだ。
はじめてなんだよ。こんなに気が合う人に出会ったのは。
…よかったら今夜限りじゃなくてさ、
これからも仲良くしてくれない?」




自然と微笑みがこぼれた。




「…もちろん」








「「友達として」」





一拍おいて、二人で笑いあった。

こんなに息があうなんて…
本当に懐かしい感じがする。


だからこそ、どこか距離を置かなきゃいけない気がするの
わたしにはまだ分からない

でも、懐かしい香りがする…




「はは…えぇ。よろしく、ロミオ。
でも、多分この先会うことはないわ」


多分、この出会いは今夜限り
こんな奇跡は今夜限り


「こんな大人数の中で会えるなんて奇跡だもの。」




「そんなこというのかい?」


目を輝かせて少年のように笑うロミオは別人のように見えた。


「そしたら、いまだって奇跡じゃないか!僕達は、いまここで喋って笑いあってるだろ?ほんの一時間前は存在すら知らなかったのに。 絶対また会える。そんな気がするよ 」




「…僕はそう思うよ」


言葉を言うにつれてロミオの顔は最初のように大人の顔つきになっていた。



なぜかこの顔は好きになれなかった
なにか諦めてるような、悟った顔。



とっさに出てしまった。

「その作り笑顔をやめればね。」



いつもならこんな事を他人には言わない
でも何故か言ってしまった。
なんとなくこの人はこんな顔をする人じゃないと思った。



でも、こんな言葉にロミオの顔は変わらない。

「…ふぅ。わかったよ。
女性は、大人の男性の方が好きだろ?
だから、大人っぽく振舞ってたのに」



すこし唇をとがらせながらも
真面目な顔で質問するロミオには笑ってしまった


「そうね、確かに。
でも、わたしは少年のような人が好きなの。ごめんね、いじわるな事を言って。」




そう喋っているうちに会場の司会の声が聞こえてきた。

いまからカジュアルスタイルのパーティが始まるらしい。




「行こうか。」




そう言うロミオの顔は大人の顔付きに変わっていた。



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