この気持ちに名前をつけるなら


「一子ちゃん、あの子と友達なの?」



仕事の合間に、そう話し掛けてきたのは華澄さんだった。

華澄さんが言う“あの子”とは、坂下。



「クラスメイトです。今日からで向こうは私のこと知らないみたいですけど」

「やっぱ高校生だったんだー」



ふーん、と納得したように、華澄さんが頷く。



「あの子、結構店に食べに来るのよ。近くのアパートに住んでるみたいたけど、どうも一人暮らしっぽいのよ」

「え、高校生で一人暮らしですか?」

「ね。だから私も大学生なのかと思ってたんだけどね。それにしてはまだ幼いなぁって」

「母さん、」



聞いていたのか、利也さんが溜め息混じりにたしなめる。



「お客さんは詮索しない」

「心配してるのよ。男で一人暮らしなんて。こんなにウチに来てたら栄養のバランスとか大丈夫かしらって思うじゃない」



確かに。

自分で料理しないのかな。

……私なら財布が心配過ぎるけど。



なんか事情でもあるのかな。

でも利也さんの言う通り、あんまり突っ込まない方がいいかも。





坂下は注文したペペロンチーノをさっさと食べ終わると、すぐに会計をしにレジに来た。

確かに慣れてるな。

クラスメイトがお客さんって、なんかどう接したらいいか、距離感が少し迷う。

坂下が知らないならさっき声を掛けなければよかったと少し後悔した。

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