この気持ちに名前をつけるなら
声を掛けて利也さんが、私の落ち込みっぷりに驚いて、心配してくれる。
「お昼からずっとで疲れちゃった?」
「いえ、大丈夫です」
「ごめんね。よく働くから甘えちゃって。さおりちゃんに怒られちゃうな」
私を安心させるように冗談を交えて気遣ってくれる利也さんはすごく大人に見えた。
「一子ちゃん、外で彼氏が待ってたから、もう上がっていいよ」
利也さんはにっこりと笑って、ドアの方を指差した。
「彼氏?」
そんなのいませんけど、と思ってドアを開けると、そこには光太が壁に寄り掛かって経っていた。
「光太!どうしたの?!」
「部活。さっき終わったから。そろそろ終わるんじゃないかと思って」
「どれくらい待ってたの?」
「さっきだって。店のお兄さん、もう終わるって言ってたけど。帰れるの?」
「あ、うん。もう上がっていいって」
そう言うと、光太は「お疲れ様、」と、大きな手で私の頭を少し乱暴に撫でた。
光太はよく私の頭をこうやって撫でる。
背の高い光太にとって、私の頭の位置はちょうどいいらしい。