この気持ちに名前をつけるなら
「でも、普段からよく来るって華澄さんが……」
と、ここまで言って、しまった、と思った。
踏み込むつもりもなかったのに。
坂下がギロリと睨んできた。
「えーと……、ごめん。別に詮索するつもりもないんだけど……。やっぱ私が働き始めたのが原因で来なくなるなら、私の方が辞めた方がいいかと思って……」
「……は?」
「あ、華澄さん怪我して、すぐは無理かもしれないけど。私が辞めたらまた来れるなら、待ってくれれば……」
「……、」
坂下の視線がなんか怖くて、背中に汗が吹き出てきた。
緊張して、制服のスカートの裾をもじもじと弄る。
あーもう、関わるんじゃなかったかも。
でもなぁ。
『メロウ』に迷惑かけるし。
なんか色んなことが不安になってもんもんとしていると、坂下が大きな溜め息をついた。
「だから、野上のせいじゃないから。クラスメイトが働いてるところに行きにくくなるのは普通だろ。それに、野上のせいで俺がいかなくなったとしても、野上のお陰でくる客もいるじゃん」
だから、私のせいじゃない、と、坂下は念を押して、パンの最後の一口を口の中に放り込んだ。