この気持ちに名前をつけるなら


それなのに坂下は顔を私とは反対側に向けて吹き出した。



「くっ、はははっ」

「え、」

「いや……休みを教えてもらうって……、全然、意味ないし」



坂下はそれからしばらく肩を揺らして笑っていた。

笑った顔は少し幼く見えた。



「なんで??私がいない方がいいんじゃなくて?」

「くくく、いや、いいよ、もう。たまには食べに行く。休みは教えてくれなくていいから」



そしてまた思い出したようにひとしきり笑ってから、フッと止まって私の顔を覗き込むように首を傾けた。

私の頭にはクエスチョンマークが並ぶ。



「俺、女子苦手なんだ」



そう言った坂下の目はまた冷たい色をしていた。



唇は弧を描いている。

笑っているけど、有無を言わせない表情だった。

なんで、とは聞けない。

坂下には坂下の事情があるのだろう。

一人暮らしをしていることも、いつも一人でいることも。



「ねぇ、坂下」



私が来て居心地が悪くなったのか、坂下は立ち上がった。



「別に、私女子だって思ってくれなくていいよ」


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