この気持ちに名前をつけるなら
act3
アルバイトにもだいぶ慣れてきた。
料理の盛付けやデザートのトッピングを教えてもらったり、時間のあるときには新メニューの味見や美味しくできるコツなんかも教えてもらっている。
「一子ちゃんは覚えが早いね。その辺の大学生をとらなくてホント良かった」
利也さんが冗談混じりに言ってくれた。
坂下はあれから店には来なくなった。
来てくれるって言ったはずなんだけど。
話しかけたいけど、なんか、オーラというか、人を寄せ付けない雰囲気を出している気がするんだよなぁ。
本当に女子が苦手なんだろう。
華澄さんの話だと、週に3日は食べに来ていたらしい。
それが、あの日以来すでに2週間、一度も来ていない。
ご飯とかちゃんと自分で作ってるのかな。
ただ気に入って『メロウ』に食べに来てただけならいいけど、料理ができなくて来ていたならやっぱり問題だ。
確かに経済的な負担は大きいし、身体が細いとはいえカロリーや塩分の心配はあるけど、『メロウ』に来れないからってスーパーの惣菜やカップラーメンばかり食べてればもっと悪い。