この気持ちに名前をつけるなら
act3


アルバイトにもだいぶ慣れてきた。

料理の盛付けやデザートのトッピングを教えてもらったり、時間のあるときには新メニューの味見や美味しくできるコツなんかも教えてもらっている。



「一子ちゃんは覚えが早いね。その辺の大学生をとらなくてホント良かった」



利也さんが冗談混じりに言ってくれた。







坂下はあれから店には来なくなった。

来てくれるって言ったはずなんだけど。

話しかけたいけど、なんか、オーラというか、人を寄せ付けない雰囲気を出している気がするんだよなぁ。

本当に女子が苦手なんだろう。



華澄さんの話だと、週に3日は食べに来ていたらしい。

それが、あの日以来すでに2週間、一度も来ていない。

ご飯とかちゃんと自分で作ってるのかな。

ただ気に入って『メロウ』に食べに来てただけならいいけど、料理ができなくて来ていたならやっぱり問題だ。

確かに経済的な負担は大きいし、身体が細いとはいえカロリーや塩分の心配はあるけど、『メロウ』に来れないからってスーパーの惣菜やカップラーメンばかり食べてればもっと悪い。

< 21 / 104 >

この作品をシェア

pagetop