この気持ちに名前をつけるなら
せめてこの辺に多い居酒屋とか大衆食堂にでも行っていればいいけど、お洒落でヘルシーな『メロウ』が気に入っていたということは、やっぱり脂っこいものは苦手なのかもしれないなぁ。
やっぱりなんかすっごい罪悪感。
ごめん、坂下。
「店員さーん、」
ぼんやり坂下のことを考えていると、声が掛かって慌ててお客さんの元に駆け寄る。
最近よく来る大学生の二人組だった。
よく声を掛けてくれて、ずいぶんと仲良くなった。
歳はあまり離れてないはずだけど、大学生っていうだけでなんだか大人に見えてしまう。
「俺たち今年は就活なんだよね。なんか気が滅入るよ」
「大学生も大変なんですね」
「まぁ、自由は自由だけどね」
お客さんの少ない時ならコミュニケーションと称して雑談もできるのも、コンビニとは違うところだ。
「一子ちゃーん」
「はーい」
呼ばれて、私はお客さんに「ごゆっくり」と頭を下げてカウンターに戻った。
何の用かと利也さんの顔を見ると、特に何も無さそうである。
「一子ちゃん、大丈夫?」
「? 何がですか?」
「あの大学生、最近一子ちゃんに絡んでるみたいだからさ」
そう言って、利也さんはチラリと先程の大学生二人組にさりげなく視線を向ける。