この気持ちに名前をつけるなら
「お得意さまですしね」
利也さんの言ってる意味がよくわからず、笑って応えた。
仲良くなってまた来てくれるならそれはそれでいい。
「一子ちゃんが大丈夫ならいいけど……」
「私は全然大丈夫ですよ!」
私は利也さんを安心させるように笑ったが、利也さんはまだ心配そうな表情を崩さない。
「とにかく、何か嫌なこと言われたりしたらちゃんと言ってね」
「はい。わかりました」
「一子ちゃん素直で可愛いから、お兄さんホント心配」
「あはは。ありがとうございます」
利也さんは本物のお兄さんみたいに可愛がってくれる。
もう若くはないって自分では言うけど、来る大学生とか若いOLさんとかのこともちゃんと理解している。
利也さんこそお客さんに人気だ。
私にしてみたら、本当に大人で頼れるお兄さん。
「ありがとうございました。またお越しください」
大学生のお客さんの会計を済ませる。
レジが出口から近いため、自然とドアを開けて外まで見送る形になる。
「あ、イチコちゃん」
「はい?」
名前、言ったことあったかな?と一瞬思ったが、特に気にすることもなく、少し高い位置にあるお客さんの顔を見上げた。