この気持ちに名前をつけるなら
act4
「そういえば、GW過ぎたら修学旅行の準備が始まるから、適当に研修グループ作っとけよー」
帰りのHR終了間際。
担任の鍋田先生がついでとばかりに言うと、教室がにわかにざわめいた。
修学旅行は6月中旬。
うちの学校は北海道に行く。
殆どの生徒は北海道なんて行ったことがない人ばかり。
高校生活の一大イベント。
皆楽しみで仕方ない。
勿論私も北海道なんて行ったことがない。
飛行機に乗るのも初めてだ。
北海道と言えば美味しい食べ物。
そして雄大な自然。
野生の動物たち。
テレビで見る光景を思い浮かべる。
勿論楽しみは楽しみだけど、やはりウチの家計の方が心配の種。
お母さんも弟妹も両手を上げて行ってこいって言ってくれる。
いや、行く。
行きます。
行かせて頂きます。
楽しみです。
初めての北海道。
だけども。
お小遣いを合わせてバイト代3ヶ月分。
今年は弟の剣二も修学旅行だし。
私は動悸が止まりません。
今から私の心臓が持つでしょうか。
そんな心配はする必要はないとお母さんにはよく言われるけど、こればっかりは性分というか、心配せずにはいられないのだ。