この気持ちに名前をつけるなら
「アンタは一子のストーカーなの?」
その日、『メロウ』で坂下と鉢合わせしたさおりは、何故か仁王立ちで坂下を見下ろしてした。
「さおり、違うの!坂下は私が来る前から『メロウ』の常連さんなの!」
私は慌ててフォローすると、全く動じない坂下を一瞥して「冗談よ」と坂下の正面の席についた。
「なんで同席……?」
「いいじゃない別に。何か不満?」
「……、」
いい具合に空気を読まないさおりは、プリンアラモードを注文した。
注文したアラビアータをそのままに席の移動もできない坂下は、呆れたように息を吐き出すと仕方なさそうに食事を続けた。
「ねぇ、坂下は修学旅行どうするの?」
「……どうするって?」
「研修のグループ分け」
私が仕事をしていると、意外にも二人は普通に会話していた。
さすがさおり。
話題は修学旅行らしい。
確かに、坂下はいつも一人でいるから、誰かを誘ったり誘われたりというのはなかなか想像がつかない。
「最低でも三人以上と研修場所回らないといけないのよ。坂下、誰かと回れるの?」
「……まぁ、別に誰とでも」
坂下は興味もなさそうに受け流した。