この気持ちに名前をつけるなら
さおりはアヒル口を尖らせ、鼻歌混じりにスプーンをクルリと回すと、生クリームが乗ったプリンの上にガツン!と突き刺した。
笑顔のままで。
「監視に決まってるじゃない」
さも当たり前のようなさおりの言葉に、私と坂下は若干恐怖を憶えたのだった。
「それもこれも、二人でコソコソ会ってるのが悪いのよ」
「コソコソってわけじゃ……」
「一子も何にも言ってくれないし、クラスでもよそよそしいのに、こんな薄暗いお洒落なレストランで夜な夜な密会するなんて!」
「密会って……」
勿論そういうつもりではなかったのだけど。
結果的にはさおりや光太には何も言ってなかったし、不安にさせてしまっていたのかもしれない。
結果的に坂下は私のとばっちりとなったわけだ。
「変な誤解させてごめん」
「いや、こんなんじゃ仁科には言えないよな。騒ぎが大きくなりそうだし」
「なんですって?」
坂下が言うと、さおりはとうとう席を立って坂下を睨みつけた。
わわわわわ……!!
一触即発?!
すると、坂下は意外にもクッと笑って、席を立った。
「野上。会計」
「あ、はい!」
「俺がいると野上は仕事にならないみたいだし、俺は帰る」