この気持ちに名前をつけるなら


「逃げるの?!」



さおりの言葉に、坂下は後ろ姿のまま手をヒラヒラと振る。



「考えておく」



私はさおりと顔を見合わせたあと、慌ててレジへと走ったのだった。









「さおり。ごめんね、黙ってて」



しばらくしてカウンターに移動したさおりの前にゆずシャーベットを置いた。

勿論私の奢り。

さおりは頬を膨らませて唇を尖らせている。



「さおりちゃん、どうしたの?そんな顔して」

「利也さーん!」



利也さんはさおりの顔を見るなり笑って言った。

さおりはえーん!と泣き真似をするように利也さんに甘え、利也さんもそれにノッてよしよし、と頭を撫でてあげる。



「聞いてくれますか?一子ったら、クラスの男子と私に内緒で密会してるんです!」

「密会じゃないよー!」

「あはは、坂下くんかい?」

「そう、坂下です!」

「彼、よく来るからね」

「一子、可愛いから坂下絶対一子のこと好きになっちゃう」

「え?!さおりそんなこと心配してたの?!」



さおりの心配は、私の想像からかなり外れたところにあった。



「確かに一子ちゃんは可愛いからなぁ」

「ですよねー」

「利也さんまで!」


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