この気持ちに名前をつけるなら


「あ、そういえば、俺、次の大会で団体出られるかもしれないんだ」



光太は思い出したようにこちらに顔を向けて、嬉しそうに報告してくれた。

柔道の試合のことだ。

光太は高校生になったずいぶんと身体が大きくなった。

身長も伸びたけど、なんというか、全体が一回り大きくなった。

鍛えているんだろう。


「ほんと!?すごいね!」

「うん。今日主将に呼ばれて、そのつもりで稽古しておけって」



柔道については、私は光太の試合を見に行く程度しか知らないけど、それでも試合はすごく楽しい。

特に団体戦の一体感、大将までもつれ込んだときの緊張感は本当に興奮する。

1年の時は個人戦だけだったけど、それでも県大会ではベスト8まで進んだ。

きっとそれを評価されたのだ。

柔道部は三年生だけでも10人以上いるはずだから、その中でも二年生で団体に入れるこは、多分すごいことなのだ。



「光太は、ずっと柔道続けていくの?」

「うん。できれば」

「大学行くの?」

「どうかな。頭は悪いから」



言って、光太は笑った。

柔道をやりたい気持ちだけで、あとの具体的なことはまだ何も決めていないんだろう。

光太らしい。



「一子、」

「うん?」


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