この気持ちに名前をつけるなら
やっぱり迷惑だったかな。
まぁ、顔見て煮物渡すくらいなら。
しばらく待ってると、玄関のドアが開いて、ホッと息をつく。
「おはよう。寝てた?」
「……はよ」
ラフな格好で出てきた坂下は、やっぱり寝起きのようだった。
「顔色、悪いね。病院行った?」
「行ってないけど……」
「なんで」
「なんでって、熱があるわけじゃないし」
「駄目だよ、ちゃんと病院行かなきゃ」
坂下は面倒そうに頭を掻いた。
「とりあえず近所迷惑だからドア閉めて」
坂下の言葉に私は慌てて玄関のドアを閉めた。
「で、ウチに来ることは仁科には言ってあるの?」
「え?さおり?なんで?」
「……、」
坂下は大きな溜め息をつく。
「すぐ帰るよ。あの、これ、持ってきたの」
「え?」
言って、私はズイっとタッパーの入ったバッグを突き出す。
「煮物なんだけど。坂下、料理しなさそうだから。『メロウ』ばっかり来てて栄養偏るよ。だから体調崩すんだよ」
突き出されたバッグを、坂下はそのまま受け取り、中を覗く。
「食欲なかったんじゃないかと思って。和食だから食べやすいと思うんだけど」