この気持ちに名前をつけるなら




日曜はお昼のラッシュで終わり。

午後3時。

私は約束通り坂下のアパートを訪れていた。


朝と同じようにインターホンを押すと、大きな足音と共に勢いよく玄関のドアが開いた。



「野上、ごめんっ、」

「?」



朝の時とは違う雰囲気で、坂下は焦ったように私を見る。



「ちょっと、」



坂下は私の手を取ると、家の中へと引っ張っていく。



「え、ちょっと、待って!靴!靴!」



私は慌てて靴を脱いで、手を引かれるままに部屋の中に入る。

居間へのドアを開け、連れていかれたのは台所だった。



「ごめん、タッパー、……溶けちゃって……」

「……あー、」



そこには、変型したウチのタッパー。

多分、そのままレンジにかけたのだろう。

耐熱用じゃなかったから。



「私も、レンジで温めてとしか言わなかったもんね」

「……ごめん。普通はわかるよね」



うん。まぁ。

私は心の中で呟いた。



「弁償するから」

「え?いいよ、これくらい。ウチにあったやつだし」

「でも、」

「たいしたものじゃないし、大丈夫だよ」

「……ホント、ごめん……」


< 42 / 104 >

この作品をシェア

pagetop