この気持ちに名前をつけるなら
日曜はお昼のラッシュで終わり。
午後3時。
私は約束通り坂下のアパートを訪れていた。
朝と同じようにインターホンを押すと、大きな足音と共に勢いよく玄関のドアが開いた。
「野上、ごめんっ、」
「?」
朝の時とは違う雰囲気で、坂下は焦ったように私を見る。
「ちょっと、」
坂下は私の手を取ると、家の中へと引っ張っていく。
「え、ちょっと、待って!靴!靴!」
私は慌てて靴を脱いで、手を引かれるままに部屋の中に入る。
居間へのドアを開け、連れていかれたのは台所だった。
「ごめん、タッパー、……溶けちゃって……」
「……あー、」
そこには、変型したウチのタッパー。
多分、そのままレンジにかけたのだろう。
耐熱用じゃなかったから。
「私も、レンジで温めてとしか言わなかったもんね」
「……ごめん。普通はわかるよね」
うん。まぁ。
私は心の中で呟いた。
「弁償するから」
「え?いいよ、これくらい。ウチにあったやつだし」
「でも、」
「たいしたものじゃないし、大丈夫だよ」
「……ホント、ごめん……」