この気持ちに名前をつけるなら
「……すごい」
坂下の感嘆の声に、私の方が大満足。
私は鼻高々で胸を張った。
豆腐入りのハンバーグの種を作って、ひとつずつラップに包んで冷凍しておいた。
同じように豚肉も下味を付けて焼くだけにしておいて、冷凍庫。
野菜をとって無さそうだから、キュウリの酢の物を瓶に入れておいた。
あまり揃っていなかった調味料関係は100円ショップ。
「あとは、このチンするだけのご飯は、少し高いけどコンビニにも売ってるし、本当は手作りがいいけど、簡易味噌汁。こっちに乾燥ワカメととろろ昆布、お麩と乾燥ネギも置いてあるから、お味噌汁に入れるだけだから」
驚いたことに、坂下は即席ご飯の存在すら知らなかった。
「で、今日の夜の分はキムチ鍋と、マカロニサラダね」
「……キムチ鍋……」
「春だけど。坂下、辛いもの好きでしょ」
坂下は驚いたように目を見開いていた。
『メロウ』でも、よく辛いものを注文しているのを私は知っていた。
「これ、全部野上が作ったんだよな。こんな短時間で」
「ちょっと夢中になりすぎてしまいました」
「すごいな……。もしかして、今朝の煮物も……」
「え、私だよ?」
「……、」
坂下は、本当に驚いたようにしばらくキムチ鍋を見下ろしていた。