この気持ちに名前をつけるなら


よしよし、予想以上に感動してくれたらしい。

私からしてみればたいしたことはない。

むしろ、一人分プラス本人のお金だというのをいいことに好きなものを作らせてもらった。

家ではハンバーグなんてあんまり作れないし。



「じゃ、私は帰るね」

「え?!」



大満足して上着を着る私に、坂下が大きな声をあげた。

鞄を拾った姿勢のまま振り返ると、口をポカンと開けた坂下。



「野上は、食べて行かないの?」

「え?」

「野上が作ったのに……」

「だって、坂下のお金だし。一人分しか作ってないし」

「……、」



坂下はまた鍋を見下ろす。



「じゃあ、本当に俺のためだけに、買い物から料理までしたの?」

「……まぁ、坂下のためっていうか」



そうなるのかな。



「もしかして、一人で食べるの嫌だった?」

「そういうわけじゃないけど……」



坂下は眉間にシワを作って、首を傾げる。



「?」

「……俺、何が言いたいのかよくわからなくなってきた……」



首の後ろを触りながら、脱力するように息を吐き出した。

私は、そんな坂下がなんだか可愛らしく見えて、微笑む。



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