この気持ちに名前をつけるなら
今日は始業式だから授業もなく、午前中で学校も終わり。
光太は午後から部活。
中学からやっている柔道を、高校でも続けている。
さおりは美術部だけど、新学期からはやることがないらしく、私と一緒にバイト先『メロウ』へと向かった。
カラン、とドアベルを鳴らして店に入る。
良い匂い。
お腹が空いてくる。
平日のお昼だけど、店には結構なお客さんが入っていた。
「わぁ、いい雰囲気」
さおりが店の中を見回す。
半円のカウンター、テーブル席合わせて20席程度の店内。
内装は古い喫茶店のような柄物の壁、重層感のあるテーブルと椅子、ソファーが並べられ、オルゴールのような骨董品も並べられている。
「あ、一子ちゃん。まだ時間じゃないけど、手伝ってもらっていいかな??」
カウンターから料理を運んできた人が、私を見つけて優しく声を掛けてくれた。
「あ、はい!さおり、どっか座ってて。準備してくるね」
「うん。……あの人もバイトの人?」
「利也(としや)さん?マスターの息子さんだよ。シェフだって」
「へぇ、」