この気持ちに名前をつけるなら
「かわいいパーカーも買ったし、かわいい下着も買ったし、大満足だね」
「ううぅ……、」
「もー、一子ったら。おばさんも好きに使いなさいってお金くれたんだから、気にしないの!」
私の抱えた頭の中では、孝四郎の給食費、三久や剣二の文房具や教材費、毎日の食費が数字となって駆け巡る。
そんな私を見越したお母さんは、さおりに私の買い物の全てを託したのだった。
……ごめんね、さおり。
「ねぇ、一子。家族のことも大事だけど、一子も自分のためにすることがあるんだよ?」
「……うん、」
「けんちゃんもみくちゃんもこうちゃんも、おばさんも私も光太も、みーんな、一子が幸せになってもらいたいって思ってるんだよ。本人が一番自分を大事にしなかったら駄目じゃん」
テーブルにうつ伏せる私を叱咤するさおりに、私はうるっと涙ぐむ。
「さおり……」
「一子がずっとそのまんまじゃ、皆も切ないよ」
「……うん」
さおりの優しい言葉に私は涙を拭いてドーナツにかぶりついた。
皆優しすぎる。
それだけで私は幸せだよ。
「じゃあ一子、次はドラッグストアにいくからね」
ニッコリ笑ったさおりの顔は、私にはスパルタコーチに見えた。