この気持ちに名前をつけるなら
私はドキリとした。
その意味はわからない。
でも、動揺を隠すように、私は首を傾けて笑った。
「勿論男としてだよ」
「……、」
私の心なんて関係無しに、さおりはズバリと言い切る。
言われて、私は前に坂下に屋上で言われたことが頭を過った。
「男として……、」
「そう。男として」
「……、」
さおりが言わんとしていることはなんとなくわかるのだけど、いざ自分が光太をどう思っているのけと聞かれると、心の真ん中がザワザワする。
「……そりゃあ、光太は好きだけど」
大事に思っている気持ちに嘘はない。
私は間違いなく、光太のことは好きだ。
そのことはさおりも多分充分知っているだろう。
けれど、そういう意味ではないのだ、さおりが言うのは。
男としてって、何が違うのだろう。
私はさおりも好き。
でも、さおりを女として好きかと言われれば、それもよくわからない。
女としてとか、男としてとか、そんな分類があるなんて私にはわからない。