この気持ちに名前をつけるなら



私はドキリとした。

その意味はわからない。

でも、動揺を隠すように、私は首を傾けて笑った。



「勿論男としてだよ」

「……、」



私の心なんて関係無しに、さおりはズバリと言い切る。

言われて、私は前に坂下に屋上で言われたことが頭を過った。



「男として……、」

「そう。男として」

「……、」



さおりが言わんとしていることはなんとなくわかるのだけど、いざ自分が光太をどう思っているのけと聞かれると、心の真ん中がザワザワする。



「……そりゃあ、光太は好きだけど」



大事に思っている気持ちに嘘はない。

私は間違いなく、光太のことは好きだ。

そのことはさおりも多分充分知っているだろう。

けれど、そういう意味ではないのだ、さおりが言うのは。



男としてって、何が違うのだろう。



私はさおりも好き。

でも、さおりを女として好きかと言われれば、それもよくわからない。

女としてとか、男としてとか、そんな分類があるなんて私にはわからない。


< 55 / 104 >

この作品をシェア

pagetop