この気持ちに名前をつけるなら
応援しているのは私で、応援されているのは光太なのに、なぜか、私の方が励まされているみたいだ。
私が、少しでも光太の力になれている。
それが、私の心を満たしていく。
「怪我しないでね」
『うん』
名残惜しくも通話を切ると、私はとても清々しい気持ちで顔を上げ、家路を急いだのだった。
次の日、光太は団体戦はベスト4に貢献し、個人戦ではなんと優勝を果たした。
柔道部では一躍エースと呼ばれるようになり、光太は学校での雰囲気が変わったように感じたけれど、笑って「やっぱり前日の電話のお陰だ」と冗談を言ったのを聞いて安心した。
私は約束通りカレーを作って光太を家に招待すると、剣二や三久、孝四郎も含めて皆で遊んだ。
昔を思い出す。
帰りに、「また前みたいにいつでも遊びにきて」と言うと、光太は「うん」とだけ頷いた。
光太の顔が少し寂しそうに見えたのは、きっと月明かりのせいだろう。