この気持ちに名前をつけるなら


私はさおりをテーブルに残し、急いでスタッフルームへと入っていった。



「あ、一子ちゃん。いらっしゃい」

「よろしくお願いします!」



スタッフルームにはマスターの奥さん、華澄(かすみ)さんがいて、私は頭を下げた。



「こちらこそよろしくね。ごめんね。私も多少仕事はできるんだけど、あの人と利也に怒られちゃうのよ」



華澄さんは私に顔を寄せ、こそっと言った。

華澄さんは最近転んで手首を折ったようで、包帯で巻いた腕は痛々しい。

雰囲気はとってもかわいいが、仕事ができる感じの人で、マスター曰く、「俺が止めないといくらでもやる」らしい。

今回の怪我も無理して転んだらしく、これを期に仕事量を減らせということになったようだ。



「マスターに安心してもらえるよう、頑張らせて頂きます!!」

「心強いわ。ありがとう」



働きっぱなしのお母さんには甘えられないし、いつも弟妹とか年下の面倒ばかりだから、年上の人に囲まれることは今まであまりなかった。

そういう意味でもここはなんだか新鮮に感じる。

安心できる。

でも、仕事なんだから、居心地がいいなんて甘えてちゃダメだしね!

一子、頑張ります!


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