この気持ちに名前をつけるなら
「ちょっとお手洗い行ってくるね」
「うん。この辺にいるね」
さおりが離れて行き、ふと周りを見渡すと、前の方に、坂下がひとりで何かを見ているのが見えた。
「坂下、」
背中を軽く叩くと、坂下が振り返った。
私も覗き込むと、フクロウがちょこんと座っている。
「かわ……っ!ねぇ、かわいい!」
「かわいい?」
「かわいいよ!ねぇ、光太!」
私は振り返って光太に同意を求めると、光太は頷いたくれた。
すると坂下は怪訝そうに指を差す。
「そう?あっちのメンフクロウの方がかわいい」
「え、あれはかわいくないよ」
「かわいいよ」
「坂下の美的感覚、変!」
私が拳を握って力一杯言うと、坂下は声を出して笑った。
そんな坂下を見て、なんだか私も嬉しかった。
「何?」
「え?」
「俺の顔見て笑ってる」
照れたように顔を反らす坂下。
少し子供っぽい。
「なんか、楽しんでるなーと思って」
ニヤニヤと坂下の顔を覗き込むと、坂下は次の展示に向かうために歩き出した。
私もそれを追う。