この気持ちに名前をつけるなら



「うちに押し掛けてきて料理まで作ったやつが言うの、それ」

「あ、」



嫌味ではなく、からかうように。

坂下はしばらく可笑しそうに笑っていた。



「野上は、いつも他人のことばっかり気にしてるね」

「え、」

「自分のことよりも、周りの心配ばっかり」



坂下はそう静かに呟くと、私の頭を通り越して、何故か光太を見ていた。



「でもって、肝心の野上の心配は高槻や仁科がしてる」

「……、」



光太も、坂下を見ていた。

私の頭の上で、どういう訳か微妙な空気が流れる。



あれ?

私の話をしてるのに、私がおいてけぼり?



私が頭にクエスチョンマークを並べて二人を交互に見比べていると、光太は私の肩に手を置いて口を開いた。



「俺もさおりも、好きでやってるよ」



光太の言葉に、坂下が苦笑を溢す。



「高槻がそれでいいなら、幸せだね」

「……、」



二人の会話が、全くわからない。

最初から聞いてるのに、私の話をしているのに、全然わからない。

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