この気持ちに名前をつけるなら
「本当は、さおりが行けって」
「さおりが?」
私はタオルを頭に乗せながら、もらったスポーツドリンクの蓋を空けた。
「なんか、色々暗躍してるっぽいんだよなぁ」
「暗躍?」
光太は独り言のようにポツリと呟いたのを聞いて、私は光太の顔を見上げた。
「さおりには色々気を遣わせてるっていうか、心配させてるみたい」
「え、光太が?」
意外に思って言うと、光太は眉を下げて笑う。
「まぁ、色々ね。
さおりってさ、なんだかんだでお節介っていうか、放って置かないよな。気になることはとことん首突っ込んでくるっていうか」
「そうだね。文句言いながら、結局構っちゃうもんね」
「うん。俺、さおりのそういうところが結構好きだな」
「うん!私も!」
私の好きな人が私の好きな人を好きと言ってくれる。
それが、私にとっての幸せ。
誰が笑っても、それが本当にかけがえのないことだということを、私は知っている。
人の気持ちというのは変わらないとは言えない。
でも強制はできない。
だからこそ、この瞬間はとても尊くて、大事だ。