この気持ちに名前をつけるなら
修学旅行で浮かれるのは私だけではないらしい。
「え?」
隣のクラスの女子三人組に声を掛けられた。
名前は知らない。
顔は見たことある程度。
さおりとお風呂に行って上がった後。
髪とか肌とか無頓着な私は早めに終わって浴場の向かいのソファでさおりを待っていた時だった。
「光太?」
話題に上がった光太の名前を反芻すると、三人組の一人、長い髪を後ろでひとつにまとめた子は顔を赤らめて肩を竦めた。
「付き合ってないって聞いたけど」
「え、うん。幼馴染みだけど」
「本当?」
一人、おかっぱのピアスをした子が威圧的に私に迫ってきて、たじろぎながらも頷く。
「あの、野上さん、ごめんね」
顔を赤らめた子が、おずおずと話し出した。
「高槻くんって好きな子いるのかな?もしかして仁科さんとか……」
「……さ、さぁ……。あんまり聞いたことないけど」
仕方なく首を傾ける。
「そうなんだ……」
儚く笑みを浮かべたその子は、光太のことが好きなんだ。
きっとそうだ。
だからこんなに可愛いんだ。
大きな人形を胸に抱いても違和感がないくらい可愛い女の子だけど、それだけじゃない。