この気持ちに名前をつけるなら
健気で、必死な感じが女の子を可愛くさせるんだ。
私にはあまり縁のない話だけど。
「野上さんは、その、高槻くんのこと好きじゃないの?」
「え?」
不安そうに胸で鞄を握りながら、女の子は震える声で言った。
「好きじゃないっていうか、好きは好き、だけど……、」
そういう好きじゃ、ない。
よくわからないけど、きっとこんな可愛い恋心ではない。
「ごめん。私、あんまりそういうの、わからないんだ……。だから、きっと光太が好きな人がいても、多分話にもならないのかも……」
「そうなんだ」
どういう顔をしたらいいのかわからなかったけど、なるべく笑顔で頷いた。
「野上さんが高槻くんのこと好きじゃないなら、ちょっと安心した。勝ち目ないって思ってたから」
彼女は、ありがとうと言って、ワンピースの裾をヒラヒラと揺らして、女の子らしく、可愛く去っていった。
「何あれ」
ぼんやりしていてさおりが来たことに気付かなかった。
声がして、振り返った。