この気持ちに名前をつけるなら
さおりは不機嫌そうに私の隣に腰を下ろす。
髪がフワフワしていて、揺れる度にいい匂いがした。
「あの子、修学旅行中に光太に告白するんだわ」
「そう、なんだ」
「そういうもんなの」
さおりはあのグループが嫌いなのかもしれない。
だから不機嫌なんだ。
それなら私は気にしない方がいいかな。
「ねぇ、さおり、」
「何よ」
「光太って好きな人いるのかな?」
「……、」
彼女と同じ質問をさおりにしてみると、どういう訳かさおりはますます不機嫌になって私を睨み付ける。
「光太とさおりが付き合ってるなんてことは……」
「ないないないない!」
食いぎみで全否定された。
「だとしても、一子に言わないわけないでしょ!」
少しは信用してよ、と、さおりは頬を膨らませる。
「もしさ、光太に好きな人がいたら、私ってもしかして邪魔になるのかな」
さっきの女の子は、何度も私と光太の関係を確かめた。
不安に思ってた。
彼女は聞いてくれたけど、聞けないまま諦めることもあるんじゃないかな。
もしそれが、光太が少しでも気になる子だったとしたら。